2021年7月11日
[東京]
フランス人ヴィンセント・フィショは、自身の2人の子どもを、3年前に彼らの母親にあたる人物によって奪われて以降、一度も会えておらず、子どもたちとの再会を切望し、今週末に東京オリンピック・スタジアムの近くでハンガーストライキに入った。
日本は、先進国の中で「共同親権」を認めていない特異な国家だ。実際、物理的に子どもの世話を見ている親が、ほとんどの場合において単独親権を勝ち取っている。
この方針は、親たちを残酷な行動に走らせる―。子ども連れて逃げ出せば、もう片方の親に会わせる義務を負うことなく、ほぼ確実に親権を得ることができるのだ。
弁護士は、これこそ毎年何万もの家庭に起こっていることだと言う。そして、フィショにも。彼の婚姻関係が破綻し離婚を求めた時、彼の妻は3歳間近の息子ツバサと、11カ月の娘カエダを連れて、逃げてしまったのだ。
「私の子どもたちは3年前に誘拐されて以降、消息が分からないんです」と、ハンガー・ストライキの2日目に入った日曜日に行われたインタビューでフィショは語った。「どこにいるかもわからないし、健康がどうかもわからない。生きているかどうかすら、わからないんです」。
子どもたちを奪われて以降、フィショは彼らを取り返すべく、懸命な闘いを続けてきた。日仏の裁判所、国連人権理事会、そして欧州議会にも訴えてきた。
日本の警察は彼に、もし子どもに近づこうとしたら子どもの誘拐を企てたとして逮捕されると言ってきたと、フィショは語る。
欧州議会が2020年7月に、欧州出身の子どもたちが日本で誘拐されている状況について非難する決議をほぼ満場一致で採択し、また日本が国際法を遵守していない事に対する批判を表明した時、フィショは勝利を収めたかのように見えた―。だが、事態は何も変わらなかった。
2019年の6月、フィショは日本で仏大統領エマヌエル・マクロン氏と面会した。マクロン大統領はこの状況を「看過できない」と評し、当時の総理大臣安倍晋三までその議題を届けることを約束した。
しかし、それ以降、この問題について動こうとするフランス人に対して、日本政府は拒絶的な姿勢を見せるようになった。例えそれが自分の子どもがどこにいるのかと確かめるレベルの動きだったとしても、だ。
「日本政府はフランスを無視し続けており、またフランスもその状況に甘んじている」とフィショは言う。
フィショは、マクロン仏大統領が7月23日のオリンピック開会式に出席することを見込み、マクロン自身がした約束を履行させるため、ハンガーストライキを始めた。フィショは、マクロン大統領が来日する頃には、自分の健康状態は弱り、マクロンが『決断』するまで数日ないしは1週間程度しか余裕は無いだろう、と言う。
「私は、子どもたちに対して責任があると信じています」とフィショは言う。「今のシステムでは、私は子どもたちと再会することは無い。もう、失うものは何も無いんです」。
フィショは千駄ヶ谷駅の外、新設された国際競技場からわずか270メートルのところで野宿をしている。バリケードが設置された会場内で行われるオリンピック式典の様子をうかがうこともできるだろう。
小さな交番が近くにあり、警官はすでに3回も彼の元を訪れた。最初は日曜日の朝4時に。そしてその日の午後に、このワシントンポストのインタビューに応じている時にも警官はやってきた。
警察曰く、フィショの抗議が右翼団体を刺激しかねないと懸念しており、すでにいくつかクレームも届いているとい。抗議が「うるさく」なりかねないと懸念しているというが、フィショはマイクも持っておらず、柱の元に座って、時折メディアのインタビューに応えているだけだ。
結局のところ、警官は、フィショの平和的な座り込みに、何ら問題を見出すことはできなかった。警官が去ったあと、年配の日本人夫婦がやってきて、応援の意思を表明した。
日本では、何万もの父親が子どもを奪われているが、時として母親も同じ被害にあっている。そしてその問題を表面化させて闘いを始めた人々もいる。日本人と結婚した何百ものアメリカ人の親が同じ状況に陥った結果、アメリカ連邦議会の支援を勝ち取り、連邦議会は日本政府に対して、彼らが子どもたちに面会できるよう圧力をかけている。
日本政府曰く、婚姻関係が破綻した結果、どちらかの親の元で落ち着くことが、子どもたちの利益を最優先に考えた結果の規定であるいう。
しかし、多くの児童心理学者は異論を唱える。片方の親から愛情やサポートを受けることなく育った子どもたちは、多くの場合見捨てられたと思い、自尊心に欠け、鬱の症状や問題行動が見られるというのだ。
日本の裁判所はフィショに対し、妻が家を出た日まで遡って収入の半分を妻に支払うように命じ、住宅ローンを支払うために東京の家を売却することを強要した。しかしながら、妻に対して、フィショが子どもと会うように強制力を発動することは拒否したのだ。
「これが私の最後の訴えです」とフィショは言う。「すべてを失いました。家も失い、裁判費用や探偵調査費用を雇うために貯金も失いました。先日、仕事も失いました。自分の身をささげるしか、もう私に残されたものは無いのです」
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Frenchman starts hunger strike by Tokyo Olympic Stadium in desperate bid to see his kids